原子力利用をはじめとして社会や人々のために有用な活動は、そもそもリスクが伴うものであります。そのリスクは、放射線によるリスクはもちろん、その他の様々な要因により生み出されます。一方で、いかに意を尽くしてリスクを抑制しようとしてもその不確かさという特性がゆえに“ゼロリスク”を実現し保証することはできません。従って、社会や人々に有用な活動をするにあたっては、なお残るリスクを理解し、それに対処する必要があります。さて、リスクはどのように説明されるでしょうか。国際リスクガバナンス協議会によれば、“Risk is an uncertain (generally adverse) consequence of an event or activity with respect to something that human beings value(私たちが価値をおくものについての事象や活動の不確かな(普通は望ましくない)影響である)”と定義されます。
日本原子力学会は、原子力の科学と技術に価値をおき、原子力の利用は社会や人々にとって有用な活動であるとしています。よってその活動によりもたらされうるリスクを理解し、その特性に応じてうまくやりくりすることが大切です。すると、リスクを理解し、管理し、共有するための研究活動を維持・発展させなければなりません。
これはリスク評価研究、リスク管理研究、リスクコミュニケーション研究の展開につながります。
2017年9月13日、日本原子力学会秋の大会(北海道大学)にてリスク部会の設立総会を開催しました。リスク部会は、日本原子力学会の19番目の部会として発足し、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション及びそれに関連するデータ類に関する研究活動の推進・発展に貢献することをその目的としてします。
リスク研究者や実務者、それを志す若い世代の方々、さらには異なる専門分野の研究者や人文・社会系の専門家であってリスクの視点の重要性を認識する皆様におかれましては、リスク部会の活動に強い関心をお持ちいただき、願わくばリスク部会員として活動に参加したいただくことを期待します。みなさまのお力添えにより、原子力の科学と技術の持つ価値が実を結び、社会から暖かく受けとめられることを願います。